かぶり厚はあまり気にしなくていい!?建築中に知ったかぶり厚の事実。

2020年4月6日新築計画

かぶり厚という言葉をご存知でしょうか?
かぶり厚とは家の基礎コンクリートの鉄筋の周りにあるコンクリートの厚さを表す言葉です。
法令等で木造の基礎コンクリートでは地面に接する基礎(いわゆる底盤部分)はかぶり厚6㎝、そのほかの部分ではかぶり厚4㎝を確保する事と定められています。
これは法令で定められているため、順守しなければいけない事項ですが、実際に建築現場では全体的には順守されていても、ボイド管やスリーブ管が敷設される場所の様な細かい部分に関しては守られていないことが多く、それらに気づいた施行主はハウスメーカーや現場監督に文句を言っている事も多いのではないでしょうか?

僕自身も基礎工事の際、ボイド管やスリーブ管周りのかぶり厚が守られていない事から現場監督に文句を言った人間の一人ですが、建築が進むにつれて「細かい部分に関してはかぶり厚を気にするだけ無駄じゃん。」と悟ってしまいました。
今回はなぜその考えに至ったのかを、きちんと理由をつけてご説明したいと思います。

※鉄筋が中央に寄っていないなど、明らかに全体的にかぶり厚が確保できていない場合は大問題です。すぐに現場監督に抗議してください。あくまでも、ボイド管・スリーブ管周りなど一部のかぶり厚が確保できていない場合の話です。

かぶり圧はどのような場面で守られていない?

よほど腕の悪い業者や悪徳業者でない限り、ほとんどの場合かぶり厚はきちんと確保されていると思います。
が、スリーブ管やボイド管、立ち上がりのフック部分に関しては多くの業者でもかぶり厚が守られないことが多い様に見受けます。
これは大手・中小のハウスメーカー工務店関係なく守られていないパターンが多いような感覚を受けます。
写真の中央にあるものがボイド管です。

コンクリートを敷設する前に、排水管などの管を通すために事前に穴の大きさと同じボール紙の筒を入れておきます。
この写真ではボイド管の上下部分の鉄筋のかぶり厚が十分確保されていません。

下の写真は立ち上がり部分のフックと型枠迄の距離です。
本来かぶり厚が4㎝必要ですが2㎝程度しかありません。
立ち上がりの鉄筋もフック形状にしていることで、フック部分の直径分鉄筋の幅が増え、その分、立ち上がりを太くしないとかぶり厚が十分確保できません。

これらのかぶり厚が確保できていないために、シンスケは現場監督に文句を言いました。
しかし、正直工事が進むにつれてこんな細かいところ気にしても仕方なかった。と思うようになったのです。

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なぜかぶり厚は必要?

そもそもなぜかぶり厚が必要なのでしょうか?
それは大きく2つ理由があります。

鉄筋を錆びから守る為にコンクリートでしっかり覆う

鉄は錆びます。
しかし、コンクリートに埋め込まれた鉄はコンクリートがアルカリ性の為、錆びません。
でも、残念ながらコンクリートは時間と共にアルカリ性から中性へと変化します。
コンクリートが中性になると内部の金属は錆び始めます。
コンクリートの中性化は非常にゆっくりと進行しますが、コンクリートの厚さがあるほど内部の金属部分の中性化は遅くなり、長期間にわたり金属の錆びを抑える事ができます。
住宅の基礎の寿命はこの内部の鉄筋がさびて強度が20%低下する時期であり、厚さ4㎝程度のかぶり厚があれば30年以上の安全性が確保されるために、かぶり厚は4㎝と規定されています。
なお、鉄は錆びると体積が大きくなり、コンクリート内で膨張した鉄骨は内部から圧力をかけ、コンクリートを破壊してしまう事もあります。

コンクリートが入り込める隙間を作る

もう一つ、かぶり厚を確保する理由はコンクリートが入り込める隙間を作る事です。
コンクリートは砂と小石と水とセメントが混ざったものです。
コンクリートにもよりますが大体は2㎝程度の小石が混ざっています。
つまり、2㎝以上のすきまが無いとコンクリートが流し込めません。
コンクリートが流し込めない隙間が生じるとその分基礎の強度が低下することにつながります。
そこで、余裕を持った4㎝以上の隙間を確保する目的でかぶり厚が規定されています。

かぶり厚が守られていない具体例とは?

さて、では実際にかぶり厚が守られていない例とはどのような状態なのでしょうか?

鉄筋がコンクリートでしっかり覆われない状態とは

立ち上がり部分の場合

例えば、本来であれば基礎立ち上がりの中央に鉄筋が配置されますが、それが片方に寄っている場合は片方がかぶり厚が大きくなり、逆に反対側はかぶり厚が不足している状態で少々問題です。
また、先ほどの写真の様に立ち上がりの先端をフック状にしている場合はフック径が50~60㎜ほどありますので(溶接などの場合は26~40㎜程度)、その分きちんと鉄筋が中央にないとかぶり厚が確保できません。
ただし、玄関回りの基礎立ち上がり部分だけの場合であれば、玄関回りは土間コンクリート工事を後に行い、さらにタイル下地のモルタルなどで左官工事を行われる可能性があるので、最終的にはかぶり厚が確保される可能性があります。
一度、現場監督に確認してみてください。

ボイド管・スリーブ管周りの場合

給排水などのパイプを床下に這わす際、どうしても基礎を貫通させる必要がある場所が出てきます。
例えば、家の内側↔家の外側といった箇所です。
そのとき、硬いコンクリートに直径10cm程度の穴を開けるのは大変ですし、穴を開ける際に内部の鉄筋を切断したりしないようにする必要もある為、事前にその部分にはコンクリートが流れ込まないように、穴を開けておきます。
コンクリートを敷設する前にボイド管と呼ばれるボール紙性の筒をセットしておき、コンクリートが固まったあとそのボール紙を取り除きます。するとパイプを通すための穴が出来ています。
本来、ボイド管を配置する際には写真の様にスペーサー(白いプラスチック)などを用いてかぶり厚を確保する必要がありますが、写真の様にボイド管を設置する場合、かぶり厚が確保できていない鉄筋(上部分と斜め下部分)があります。

かぶり厚が少ないと鉄筋の錆が進行しやすい為あまり良い状態とは言えません。
鉄筋が錆びると、鉄筋の強度低下および、鉄筋の膨張により内部破断が発生しコンクリートにひびが入ったり、剥がれ落ちてしまいます。

本題。かぶり厚は本当に必要か?

さて、上記でかぶり厚が必要な理由として、

十分にコンクリート行き渡らせ強度を確保する

内部の鉄筋の酸化を防ぎ、鉄筋の強度をたもったりコンクリートのひび割れやはがれを防ぐ

の2点が主な理由だと説明しました。
ではこの2点に対し対策が本当に必要なのかを考えたいと思います。

コンクリートが入り込める隙間を作り強度を保つ。本当に必要!?

かぶり厚確保出来ていないとコンクリート十分に行き渡らない可能性があり、基礎の強度が低下する可能性があると説明しました。
よって、工事現場では昨今ではボイド管などを取り付ける際は直接鉄筋に括り付けたりせず(接する鉄筋とはかぶり厚0㎝になる)、かぶり厚を確保するためにプラスチック性のスペーサを取り付けます。
写真ではボイド管を保持している白いプラスチックがスペーサーです。柄の部分が規定された長さあるので、必ず括り付けた鉄筋から既定の距離が保てます。

このスペーサはボイド管を保持したままコンクリートに一緒に埋まり、取り出す事はありません。
ボイド管などを取り付ける際は直接鉄筋に針金などで括り付けたりすると、ボイド管周りのかぶり厚が確保出来ていない事で、コンクリートが十分に行き渡らずに、基礎の強度不足が起こります。
しかし、それを予防するために取り付けたスペーサの体積分のコンクリートはどこに行くのでしょうか?
さらに言うなら、コンクリート内に残されたプラスチックはコンクリートよりも強度があるのでしょうか?
結局、コンクリートが十分に行き渡るようにスペーサを準備しても、スペーサ入れることでスペーサ体積分のコンクリートが絶対に行き渡らないくなると言えるのです。
その行き渡らないコンクリートの量と、ボイド管を直接鉄筋に括り付けたりすることで行き渡らなくなったコンクリートの量はどれほどの差があるのでしょうか?
又、基礎立ち上がりの鉄筋には格子状に配置されますが、この隙間は10~20cm間隔のため、ここにボイド管やスリーブ管などを配置する為にはこの鉄筋を切断する必要が出てきます。
もちろん切断した分の補強は行われます。
しかし、コンクリートが入り込まずに、強度不足になると事が嫌でかぶり厚を確保するように文句を言った結果、鉄骨をカットし、鉄骨の強度の連続性が失われてしまうのです。
このことが本当に正しいのかと言われるとシンスケは正直、「鉄筋は切らないほうが頑丈なのではないか?」と悩みました。
これらから、シンスケが持論として考えた事①は次のことでした。

持論①「ボイド管・スリーブ管周りのかぶり厚が確保されていない場合、コンクリートが行き渡らない問題点があるが、それを改善するためむしろ強度が下がる可能性がある。かぶり厚が確保できていなくて確実に問題と考えられるのは鉄筋の錆(強度維持と鉄筋膨張からのコンクリート破損からの保護)のみに限定できるのではないか?」

鉄筋を錆から守るため、かぶり厚を気にする必要はあるのか?

先ほども申し上げた通り、シンスケはボイド管・スリーブ管周りのかぶり厚確保できていない場合で一番の問題は、鉄筋にコンクリートが十分にかぶらない事によって中性化が進行し、鉄筋が錆び、強度が劣る事と内部で膨張し破裂が起こる事ではないかと考えていると説明しました。

もう一度言います。かぶり厚が無い一番の問題は、金属が錆び、膨張して内部破裂する事!!

内部破裂する事でコンクリートがかけたり、ひび割れてしまい、そこから空気や水が入り、さらに酸化が進行する悪循環につながるので、コンクリートの内部破裂はなんとしても防がねばなりません。

さて、話は変わります。

基礎の立ち上がり部分にコンクリートを敷設する際に、そのコンクリートの型枠が必要なわけですが、コンクリートはそれなりの重量がある為に型枠を置くだけでは型枠がずれたり倒れたりします。
そこで動かない様にするために金属製のセパレーターと呼ばれる留め金を利用します。

事前にセパレーターを設置し、

その上に型枠を設置し、コンクリートを流し、

型枠を外したあとはセパレーターを折ります。

真ん中の一部まっすぐになっている所がセパレーターがあった場所です。
折れたセパレータがうっすら見えるはずです。
セパレーターの一部は基礎の底盤と立ち上がり部分の間に残されたままになります。
表面はモルタルの左官仕上げで見えなくなります。
具体的な数は数えていないので分かりませんがシンスケ宅では少なからず100個以上はセパレータが使用されていると思います。

100個以上敷設されているのセパレーターのかぶり厚は何㎝?

おそらく左官コンクリートの数㎜。かぶり厚が圧倒的に確保できていません・・・
セパレーターは金属製です。
防錆加工といえ金属はいつか錆びます。
セパレーターは基礎の強度にかかわる鉄筋ではありませんが、錆びると膨張しコンクリートのひび割れや剥がれ落ちに関与することは明らかです。一度コンクリートのひび割れや剥がれ落ちが発生するとその部分から水や空気が入り込み、内部から基礎に使われる鉄筋を急速に酸化させてしまいます。
これらより、シンスケは持論②を導き出しました。

持論②「ボイド管・スリーブ管周りのかぶり厚を確保できていないかったら、そこから鉄筋が錆びてコンクリートの内部破断が起こるかも!!と神経質になってしまうが、そもそも同じリスクを抱える100カ所以上のセパレーターのかぶり厚確保できていない(そもそもするつもりが無い)のだから、たかだかボイド管・スリーブ管周りかぶり厚の1~2カ所くらいどうでも良い。気にするだけ無駄」

なお、あくまでシンスケ独自の考察です。

もう一度お伝えしますが、鉄筋が中央に寄っていないなど、明らかに全体的にかぶり厚が確保できていない場合は大問題です。
すぐに現場監督に抗議してください。
あくまでも、ボイド管・スリーブ管周りなど一部のかぶり厚が確保できていない場合の話です。

ご参考としてください。

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Posted by sinsuke86